第4節 山形村の地勢と災害要因、災害記録 |
1 自然的条件 (1) 地 勢 山形村は長野県のほぼ中央部、松本盆地の南西12㎞に位置し、日本アルプスの支脈である鉢盛山の山麓に沿って、西部は山地とその麓の集落が、また東部は肥沃な扇状地が緩やかに広がる海抜685mの高原地帯にある。 松本市、塩尻市へは12㎞の位置にあり、東部及び北西部は松本市、南西部は朝日村と隣接し、東西8.5㎞、南北4.7㎞にわたり縦に長く展開している。総面積は24.98㎞2。可住地面積は総面積の42.3%、山林面積は31.9%でゆるやかな傾斜を描き、東南北に広大に展開している。標高650mから1,745mで、地形上の高低差は少ない。 地質は、古生層に属する山地と扇状地の堆積層による平地の二つから成っている。 鉢盛山を西側の背景とした広大な平地は村の畑作地域で、集落は堂ケ入沢・本沢・三間沢川・唐沢川流域の低地に集中している。行政区は上大池、中大池、小坂、下大池、上竹田、下竹田の6地区である。 土地利用計画面積 (単位:ha)
土地利用の状況 (平成31年1月1日現在)
(2) 位 置
(3) 気 候 一般に平たん地気候に属する。過去5年間の平均気温は11.7℃であるが、寒暖の差が大きく内陸性気候の性質をもっている。年間降水量・降雪量は1,000㎜前後と比較的少なく、日照時間は長い。また、湿度が低く、空気の澄んだ自然環境に恵まれている。 (4) 自然条件にみる災害の要因 自然的条件と人為的な諸要因との相関関係により災害へと発展していく素因は常に内在している。それらのうち特に災害と関連して考えられる要因には次のものが挙げられる。 ア 流出土砂の生産源 山形村内の地層は、粘板岩と砂岩との互層(一部チャート脈)になっており、特に脆弱な地質とはいえないが、土砂の生産源として考えられる。 イ 土石流危険渓流 本村には土石流危険渓流が2箇所あり、土砂がたい積し河床が上昇している。豪雨時には周辺の集落で被害が予想されるため、その対策が必要である。 ウ 前線の影響による豪雨 梅雨期、秋雨期には、前線上を東進する低気圧や台風の北上に伴い、南海上から流入する暖湿気流によって前線活動が活発になり大雨を降らせることがあり、水害の直接の要因となる。 特に梅雨末期は集中豪雨となりやすく、警戒を要する。 エ 台風の進路による影響 長野県の位置と地形のもつ条件により、台風の接近、通過は各所に風水害をもたらす。長野県に影響を及ぼす台風を経路により大別すると、次の四つのコースに分けられる。 (ア) 県を縦断して北上する場合 県全域が暴風域に入り、全県的に風害や水害が発生する。特に東部・北部一帯は風雨が強く、台風通過後の吹き返しの風による災害をもたらす。 (イ) 県の西側に接近して北東進する場合 県全域が暴風域に入り、全県的に風害や水害が発生し、特に南部・西部の山沿いは局地的な大雨となる。 (ウ) 県の東側に接近して北上する場合 県の東部の山沿いで風雨が強く、台風の吹き返しの風が被害を大きくする。 (エ) 県の南側を接近して東進する場合 南部や東部に大雨が降る典型的な雨台風で、これらの地域に水害をもたらす。 オ 山林火災 山林面積は総面積の31.9%。過去に大きな山林火災の経験はないが、林野の荒廃は災害にもつながるため整備と管理に努める。 カ 焼岳の活動 大正13年の大噴火によって本村へ降灰の被害をもたらした焼岳は、現在も噴煙を上げてはいるものの、昭和39年からは活動を休止している。しかしながら、今後とも噴火活動については、常に注意深く留意していく必要がある。 キ 御嶽山の活動 平成26年11月の噴火(水蒸気爆発)の噴石等により、多大な人的被害が発生した。また、火砕流や降灰にいたっては、西側は岐阜県下呂市、東側は山梨県甲府市に至るまでの広範囲の発生が確認されている。 (5) 地震の可能性 県域的には、火山帯に加えて、我が国を代表する2本の地殻構造線(糸魚川-静岡構造線、中央構造線)が走っており、大規模直下型地震が予想される牛伏寺断層を含む糸魚川-静岡構造線活断層系による地震、大町付近地震などの可能性もあり、本村への被害が予想される。 山形村における地質を構造的に見ると、大きく地形を支配するような褶曲軸や断層は見当たらないものの、曽倉沢上流・堂ケ入沢・清水寺北方・観光道路等に断層が数箇所見られる。また、地層が乱れ、走向・傾斜に変化を生じたり、地層が一部直立しているものも、規模は小さいながらも観察される。さらに山地と東部の平地との境目は中央地溝帯(フォッサマグナ)の西縁である糸魚川-静岡構造線にも沿っており、本村への被害も予想される。 2 社会的条件 (1) 人 口 本村の人口推移を見ると、松本、塩尻の中間点という立地条件もあり、松本市や塩尻市等のベッドタウンとして、世帯数、人口ともに一時期増加していたが、現在は宅地造成地の減少もあり、微減に転じており、世帯数3,082、総人口8,708人となっている。(令和2年1月現在)。一方、高齢化率は26.8%(平成27年国勢調査)と、平成22年(22.6%、国勢調査)と比べやや増加傾向にある。 (2) 産 業 本村の産業別就業人口は、第一次産業18.4%、第二次産業26.9%、第三次産業53.9%(平成27年の国勢調査)となっている。 本村は総面積の30%以上に及ぶ広大な農地を所有し、スイカ、りんご、白ネギ、長芋等が特産として定着し、品質の向上と多収穫を実現している。 一時期は、高齢化や後継者不足により農業従事者が減少していたが、近年は新規就農者が増加している。 (3) 交 通 本村の道路は、主要地方道塩尻鍋割穂高線、県道新田松本線、県道上竹田波田線の3路線を基幹とし、各集落を縦横に結ぶ1級・2級村道が村民生活の基盤を形成し、各市村への連絡道路となっている。村道の整備は現在も続いているが、今後は交通安全施設の整備等、きめ細かな整備も必要である。 (4) 社会的条件による災害の要因 災害発生の原因は自然的条件が主体的なものであるが、ある種の社会的要因が自然的諸要因と相関して、災害の発生の原因をつくりだし、あるいは災害を拡大させる方向に作用する。 社会的条件の現状に起因した災害発生あるいは拡大の要因として次のことがあげられる。 ア 要配慮者の増加 高齢化、国際化の進行等に伴い、高齢者、障がい者、外国籍住民等いわゆる要配慮者が増加しており、その対策は極めて重要である。要配慮者に対しては、常に防災知識の普及に努めるとともに、災害時における避難誘導、救護、情報提供等あらゆる場面において配慮するよう努める。 イ 相互扶助意識の低下 生活環境の変化及び価値観の多様化により相互扶助の意識が低下する傾向にあるが、万一災害が発生した場合は、初期消火、緊急避難等近隣の相互扶助が極めて重要であるため、自主防災組織の育成強化、防災思想の普及徹底、住民総参加による定期的防災訓練等を実施していく。 ウ 昼間人口の減少 高齢化の進行による要配慮者の増加、生活圏の広域化による昼間の留守家庭の増加は災害を大きくする要因である。加えて、消防団員の確保難も懸念材料となる。日ごろから自主防災組織の重要性にかんがみ、地域住民の防火、防災意識の高揚と啓発を図る必要がある。 また、多くの観光客が訪れる地域では、観光客に配慮した防災体制の確立も重要である。 エ 住宅密集と人口集中 集落地に人口が集中していることは、警戒、避難情報の収集伝達を容易にする反面、一たび災害が発生した場合にはそれだけ住家、住民に被害が出やすい。とりわけ、地震の二次災害としての火災の恐ろしさは、阪神・淡路大震災が示したところである。日常の点検を踏まえた改善及び消防・防災対策の一層の強化が必要である。 オ 危険地帯の住居 住民の大半は平たんな地域に居住しているため、特筆すべき箇所はない。しかしながら、山沿いには沢筋ごとに土砂災害警戒区域に指定された場所が数多く存在し、複数の土砂災害警戒区域が重なることで、災害リスクが高まる地域に居住する住民も多い。また山間部の別荘地域に居住している住民は、地すべりや土砂崩れに巻き込まれる危険性も考えられる。 カ 広域災害時の孤立化と交通渋滞 直下型地震が発生し、主要地方道塩尻鍋割穂高線等が通行不能となった場合も交通渋滞は考えられるものの、完全に孤立状態になる危険性はまず考えにくい。しかしながら、日ごろからそれぞれの地区における避難路の確保・確認が必要である。 キ 森林の荒廃 森林経営面からみた場合、小規模な民有林が主であり、また村外の人の所有する森林もあり、必ずしも管理は行き届いていない。また、森林の伐採、地域開発のための工事等は、反面、山地の保水能力を減少させ、土砂崩れ等の誘因となり、水害の要因となる。 3 災害記録 過去の災害履歴は資料17-1に掲げるとおりである。 |